1,
二十代後半に出会ったのが
『大丈夫』という言葉だった。
その時、なぜかその言葉に
救われる思いがしたものだ。
その後、三十代あたりから
その言葉に頼ることが多くなり
以来とにかく何かあるたびに
『大丈夫』と思う習慣がついたのだった。
特に朝起き時、ついつい
会社や仕事のことを考えて
憂鬱な状態に陥るぼくを
この『大丈夫』が救ってくれた。

2,
『ゼロから数字を生んでやらう』
という高村光太郎の詩句が好きだ。
いつも自分らしさを追求しているのも
いつも自分の味を探しているのも
人のやらないことに興味をそそられるのも
不可能という言葉に挑戦したくなるのも
きっとこの言葉の影響に違いない。
『ゼロから数字を生んでやらう』
五十歳を過ぎた今でも
この言葉に心を燃やしている。

3,
二十代の後半だったが
佐藤一斎の言志四録にある
『ただ一灯を頼め』という言葉に
えらく感銘を受けたことがある。
文字の小さな文語訳本を読んだのだが
その言葉だけがはっきりと
浮かび上がって見えたのだった。
以降、その言葉が座右の銘になる。
三十代から禅仏教に興味をそそられて
関連書物を読みあさるようになるのだが
つまりはこの言葉の展開だった。
その頃に感銘を受けた臨済義玄の
『随処作主、立処皆真』
という言葉も同じ意味であり
それゆえに感銘を受けたのだろう。