エイトマンの歌詞の中に、『行こう無限の地平線』というのがある。何のことはない歌詞だが、ぼくは長い間、この歌詞にこだわりを持ってきた。
 リアルタイムでこのテレビマンガを見ていた頃、ぼくはまだ保育園児で、新幹線と同じ速さで走るエイトマン、タバコを吸うと強くなるエイトマン、実は本名が東八郎というエイトマン、それ以外には何の興味もなかった。

 歌詞が気になりだしたのは高校生の頃で、この歌をラジオで聴いた時のことだ。これを歌っている克美しげるが
『ゆうこうむげんの、ちへいせん』
 と歌っているのに気がついた。
「ゆうこうむげん、えっ、ゆうこうむげん、いったいどういう字を書くんだろう?」
 そこで候補を挙げてみた。おそらく、『有効無限』『友好無限』『有功無限』、この中のどれかだろう。だが辞書には載ってない。一番意味ありげなのは『有効無限』だ。ということで勝手に『有効無限の地平線』と決め、そう聞き取り、そう歌ってきた。

 しかし、そう聞き取り、そう歌っていくうちに、何で作詞した人は有効と無限という、まったく矛盾した言葉を並べるに到ったのだろうか、という素朴な疑問が湧いてきた。もしかしたら、そういう古い言い回しがあるのかもしれん。SF物だからその方面の独自の言葉なのかもしれん。
「有効無限は奥が深いな。いつか調べてみよう」
 ということになった。だけどなかなかそのことに取り組む時間がなく、疑問は心の奥底に長い間引っかかったままになっていた。

 その『いつか』は60歳を過ぎてからだった。たまたま見た歌詞集に『行こう無限の地平線』と書いてあったのだ。
「行こう無限だって?有効無限じゃなかったのか」
 なるほど、これだと意味が通る。だけど面白くない。いくら足の速いエイトマンといえども、これでは地平線にはたどり着かないではないか―。
 こんなつまらん疑問に四十年以上も費やして、かなり損した気がする。