吹く風

カテゴリ: 詩風録

 夏休みの楽しみの一つに、病院通いがあった。別に大病をしていたわけではない。夏休みを利用して、歯や目や鼻など悪くなっているところを治療しましょう、というやつだ。
 歯に関しては痛みを伴うので行くことは滅多になかったが、目や鼻の治療は痛みも伴わないし、何よりもバスに乗って街に出る楽しみがあったので、積極的に通っていたものだ。
 そういえば病院帰りに、クーラーのガンガン効いているデパートや本屋の中に入って、涼む楽しみもあったな。

私この地球でいろいろな夏を
手がけている者でありまして
この仕事を始めてからすでに
数十億年は経ったと思います。
人間のみなさんは私のことを
神様と呼んでいるようですが
私はそんな者ではありません。
よく公園で落ち葉を集めては
焚き火しているおじさん達を
見かけることがあるでしょう。
私はそんなおじさんなのです。
だから祭られたりするとつい
のぼせ上がってしまいまして、
火の加減を間違え暑くしたり
雨を降らせ過ぎたり忘れたり。
だから人々にいろいろな夏の
記憶記録が残るんでしょうね。

 いくら流行っているからとはいえ、背中とか肩とか太ももとかにタトゥーを入れた人が歩いていると、えらく浮いて見えるものだ。本人はそれでいいんだろうけど、周りはみな距離を置いている。
 さらにぼくのような旧人類が見ると「モンモン」などという言葉を思い出し、それが若い女性だったとしてもついつい身構えてしまう。

 ところが慣れとは怖ろしいもので、最近は頻繁にそういう人を見かけるようになったせいか、心に余裕が出来てきて、身構えながらもその人に毒のひとつも吐きたくなる。
「今だから見られるけど、ばばあになったら醜くなるぞ」
 しわくちゃばばあのタトゥーなんて、とても見られたもんじゃない。当然温泉はお断りだし、
銭湯だって利用できないから、老人会にも参加できない。皮膚呼吸は出来ないし、相変わらず周りは距離を置く。

 つまりあの人たちは、タトゥーを入れたその日から消せない過去を背負っているのだ。

五十歳になって変ったことは
トイレで手を洗わないという
地球の環境に優しい生活から、
トイレの後に手を洗うという
環境破壊の生活になったこと。
ぼくの中で大きな変化だった。
環境破壊は今なお続いていて
後ろめたい気持ちで一杯です。

六十歳になって変ったことは
ハンカチを持込まないという
ばい菌のない清潔な生活から、
ハンカチを持込んでばい菌が
繁殖し汚染生活になったこと。
ズボンの中は濡れハンカチで
繁殖したばい菌がいっぱいだ。
ポケットに手を突っ込めない。

一番目の夏が来て人は、
来年からネクタイをしなければならないというルールを作った。
二番目の夏が来て人は、
ネクタイをすることになった。
三番目の夏が来て人は、
ネクタイをすると体感温度が上がることがわかった。
四番目の夏が来て人は、
体感温度と地球温暖化の因果関係がわかった。
五番目の夏が来て人は、
「もうネクタイをやめよう」と言いだした。
六番目の夏が来て人は、
ネクタイを外そうとしたが出来なかった。
七番目の夏が来て人は、
なぜネクタイが外せないのかを考えた。
八番目の夏が来て人は、
ネクタイを外すためのルールがないからだとわかった。
九番目の夏が来て人は、
来年から夏はネクタイを外してもよいというルールを作った。
十番目の夏が来て人は、
ようやくネクタイを外すことができた。

何が楽しいというのではなく
楽しくない場面がなぜか少ない。
だから長丁場でも堪えられるのだ。

不思議なことにそれをやっていると
何度もいい運に巡り会う。どんな
修羅場でも不思議と救いの主が現れる。

仮にそれを辞めたとしても
回り回ってまた同じことをやるだろう。
そういう時なぜか力が増しているものだ。

同じことをやると言っても
それは決して逃げ場などではない。
本能がそれを好んでいるのだ。

だからいい自分をイメージできるし
だから他人にもやさしくなれる。
つまりはそれがいい運を運んでくるのだ。

不器用などという言葉で片付けてはならない。
それしか出来ないからやっているのではない。
それが天職だからやっているのだ。

1,思い込み
ぼくが会いたいと願っているあの人は
きっとぼくに会いたくないと願っているのだ。
だからずっと会えないままになっている。
すぐそこにいるのに声すら聞けないということは
きっとそういうことなんだろう。
だからぼくはそこに行かないでいる。
だから連絡も取らないでいる。
思い込みがまたひとつ思い出を壊していく。
思い込みがまたひとつ楽しみを奪っていく。

2,負けず嫌い
きみから女を引くと、ただの負けず嫌いになる。
それだけを見ると、男は皆引いてしまうだろう。
ところがきみはそこの所を十分に自覚している。
きみが心をくすぐるのは、その負けず嫌いが
女を演じているところにある。
だからそこの部分を所々隠しながら
そこに女をかけているから、妙に心をくすぐるんだ。

3,わがままな男
知り合いに凄くわがままな男がいて、
いつもぼくらは振り回されている。
男は言う、
「自分ほど、他人に気を遣っている人間はいない」
と。すかさずぼくらは思う。
『あんたほど、自分のことしか見えてない人間はいない』
と。勝手に人に気を遣うのはいい。だけど
『こんなこと言ったら、人はどう思うだろうか』
なんて考えてはいないのだろう。
あんたのその独りよがりな気の遣い方が、
他人に迷惑をかけているんだよ。

それは頭のすぐ上を飛んでいる、
だけどぼくの手はそこに届かない
それは小さく光る粒の隊列だ
だけどぼくの目は見失ってしまう
それは大きくもあり小さくもある、
だけどぼくの知能は理解できない 

未開な生物であるぼくは
それをどこまでも追いかけていく
そして坂道で追いつこうとした時
それは忽然と消えていった

目の細かい網戸の中に
映る画像をぼくらは
現実だと思っている
あの街もあの人も
この街もこの人も
みんなみんな
現実だと思っている
だけどちがうんだな
電気がないと
あの街もあの人も
この街もこの人も
やって来ないんだから

目が覚めて窓の外を見ると
嬉しくなるような日射しが
少し早い春を包んでいます

とってもいい一日なんだと
甲高い声を張り上げて
公園の鳥が朝を歌っています

普段はうるさい建設現場の
鉄骨を組んでいる音でさえ
今朝はなぜか心地よいのです

外は暖かいのか寒いのか
きっと暖かいに違いないけど
まだまだぼくは出たくないのです

売り出しの日のスーパーに行くと
駐車場所を探すのにひと苦労する。
原因を作っているのが軽自動車だ。
店側は軽自動車のため専用の枠を
いくつも用意しているのに軽側は
普通車用の駐車枠に止めてしまう。
普通車は軽枠に止められないので
ウロウロウロウロしてしまうのだ。
軽の方少し考えて止めて下さいよ。

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