吹く風

2022年07月

神さまお願いがあるのです。
次の人事のことなのですが、
私を口元が針になっている
奇怪な容姿の生き物として
誕生させないでくださいな。

動物の血を頂戴することが
究極の目標のような人生を、
動物の血を頂戴することで
目のかたきにされる人生を、
あゆませないでくださいな。

種族を絶やさないためにと
ひ弱そうな男と交わった後、
狂ったように生き物の血を
求めて飛ぶ悲しい女の性を
背負わせないでくださいな

叩き潰される人生が嫌です。
煙に巻かれ命を落とすのも、
新種殺虫剤を試されるのも、
火に飛込みたくなる衝動も、
嫌です嫌です。全て嫌です。

神さま神さま、お願いです。
あんな汚い蝿やゴキブリと
同じ類いなんてごめんです。
生を得るために死地に向う
人生も受れ入れられません。

 物書きになる夢というのが昔からあったですね。それが小説家なのか、エッセイストなのか、はたまた詩人なのか、そのへんはあまりはっきりしてなかったけど、物書きという言葉にはかなり憧れました。

 ある時期そういう会社にも所属していました。ライターばかり集めて本を作る会社でした。しかしライターというのは表向きで、実は「本に載せてやるから」といって、客からお金を巻き上げるような仕事でしてね、それに気づいてすぐに辞めたんです。

 で、以前の販売の仕事に戻ったわけですが、若い頃の憧れがなかなか消えてくれないんです。しかたなくノートなんかにぼちぼち文章を書いていた。

 40歳を過ぎた頃だったかな、ホームページというのが流行始めたのは。みんな好き勝手に文章を書いている。そういうのを見て「これはチャンス!」と思ったぼくは、さっそくそれに便乗したわけです。

 あれからずっとこういう場所に文章を書いているのですが、飽きずにそれができるのは、物書きになる夢を持ち続けているからなんですね。つまりは若い頃の憧れが、こういうブログを書かせているわけなんです。

私の背中の後ろには
諸事情がはびこって
密かに人生狂わせる

私の頭の少し上には
諸事情が浮んでいて
いつも事を荒立てる

私の左膝の皿の上に
諸事情が居すわって
中々立ち上がれない

私の肩の右上辺りに
諸事情が乗っていて
彼らに賛同できない

私の後ろの長い影を
諸事情が踏みつけて
思うように進めない

 昔は黒幕と呼ばれる悪賢い奴らが、中途半端に頭のいい兄ちゃんなんかに、やれ革命家だ、やれ地球防衛軍だ、などと言って持ち上げその気にさせ、いろんなトラブルを起こさせていた。あの教団の事件だってそうだったし、学生運動だってそんなもんだったでしょ。だからその元を断てば、日本は何とか保てたわけだ。

 今その黒幕はというと、実はこの世のものではない、悪魔と呼ばれるものに変わっている。ちょっと疲れた兄ちゃんなんかに取り憑いて、幻聴などという高等な手段を使いながら、いろんなトラブルを起こさせている。この世のものでない敵が相手なだけに、手のつけようがないわけで、これからの日本が思いやられる。

雲を脱ぎ捨てた太陽が
体を焦がしにくるので
今日の夏は疲れます。

不快指数を上げる風が
肌にまとわりつくので
今日の夏は疲れます。

頭から流れる汗の粒が
角膜を覆って痛いので
今日の夏は疲れます。

街に漂う焼肉の臭いが
鼻の中にはびこるので
今日の夏は疲れます。

昼夜途絶えぬ蝉の声が
耳の中で鳴り響くので
今日の夏は疲れます。

冷房風が体にぶつかり
首の凝りをさそうので
今日の夏は疲れます。

兎にも角にも夏全体が
暑くまとわりつくので
今日の夏は疲れます。

 ここの赤信号はえらく長く感じる。まだ二、三分も経ってないはずなのに、もう三十分以上も停まっているような気がする。きっとさっきから本線に車が通ってないので、そう感じるのだろう。
 こんな時、ぼく以外の人はどういう行動を取るのだろう。信号を無視して発進するのだろうか。それともぼくと同じように、イライラしながらも待つのだろうか。

 それにしても長い。さっきまで遠くを歩いていた人が、もうそこまで来ている。おそらくこの人はぼくが発進する前に、ここを通り抜けるだろう。

 そういえばもう変わってもいいはずなのに、信号はまだ点滅もしない。まさか故障しているのでは、と考える。だけどこの信号にさしかかる前までは、ちゃんと青だった。赤に変わったのは停止線の五メートルほど手前だった。もう少しスピードを出していれば、ここでイライラしなくてもすんだはずだが、その時はこの信号が、こんなに長いものだとは思ってもみなかった。

 もしかしてこれは今日の運の悪さなのだろうか。いやいや、そういうふうに考えてはならない。最近はこういう場合、いいことが起きる前触れだと思うようにしている。
 例えばぼくは今も夢を持っているわけだけど、この信号待ちも実はそこに繋がる布石なんだ。この一秒一秒がいい巡り合わせに向かっているのだ。
 もちろん、信号待ちとぼくの夢とは直接的には何の繋がりもない。だけど長い人生から見ると意味のあることだと、最近のぼくは思うようにしている。

 ところで今日の仕事は何だったろう。あのことはすでに終わっているし、特に今日はやることなんかないじゃないか。
 ん、待てよ、今日は休みじゃなかっただろうか。いや、休みは昨日だった。では今日の仕事は何なんだ。まさか、あそこに行けと言うんじゃないだろうな。今日は休み明けだから、あまり人と喋りたくない。やっぱり今日は休みがいい。いっそ休んでしまおうか。だけど有給休暇は取っておきたいし・・。

 ああ、それにしてもこの信号は、まだ変わらないのか。

閃光が走るように
ぼくの下腹部あたりを
痛みが突き抜ける。
おそらく出がけに
アイスを食べたせいだ。
とりあえず公園などを
探してはみる。ところが
TOTO慣れしたお尻が
公園のトイレを好まない。
しかたなくぼくは
気持ちでお尻を押さえながら、
近くのビルに駆け込んで
トイレを探したのだった。

 前の会社にいた頃、たまに倉庫で荷受けをすることがあった。

 ホームセンターだったので、毎日かなりの量の商品が入荷していたのだが、時々その中に間抜けな簡字体漢字と不格好な仮名文字が印刷してある、煤けた段ボール箱群が混じっていることがあった。

 ぼくはこの箱を触るのが嫌だった。妙な臭いがするし、虫でもいるのか触った後はいつも腕にブツブツが出来ていたのだ。
 そこでこの箱を検品する時は、それが夏の暑い時でも長袖のジャンバーを着込み、分厚い軍手をはめて、直接肌に触れないようにしていたものだ。

 側面に中華人民共和国と書かれたその箱は、ほかの荷物といっしょに大型トラックでうちの店まで運ばれてきたのだが、運転手さんはいつも同じ人だった。いい人で、よくコーヒーなどを奢ってくれたものだ。
 ある日その運転手さんから、「よかったらこれ食べて」と、小さな紙袋をもらったことがある。中身は肉まんで、これがすごくおいしかった。
「これも中華人民共和国ですか?」とぼくが聞くと、
「そんなわけないやろ」と言って、運転手さんは笑っていた。

水の兵隊と砂の兵隊が
波打ち際で戦争を繰り返す。
喚声を上げながら
一気に侵攻する水の兵隊と、
そうはさせじと身を捨てて
これを押し返す砂の兵隊が、
太陽を味方につけ
風を味方につけ
おたがいに一歩も譲ろうとしない。
くる日もくる日も
飽きもせずに
この戦争は続いている。

 夏休みの楽しみの一つに、病院通いがあった。別に大病をしていたわけではない。夏休みを利用して、歯や目や鼻など悪くなっているところを治療しましょう、というやつだ。
 歯に関しては痛みを伴うので行くことは滅多になかったが、目や鼻の治療は痛みも伴わないし、何よりもバスに乗って街に出る楽しみがあったので、積極的に通っていたものだ。
 そういえば病院帰りに、クーラーのガンガン効いているデパートや本屋の中に入って、涼む楽しみもあったな。

 床屋に行くと、いつも小さなお座敷犬が、ぼくを出迎えてくれる。ただ、出迎え方は乱暴で、必死になって吠えまくるのだ。しばらくすると寄ってきて、足をなめたりするのだが、それでも動きには敏感で、ぼくがちょっとでも動くと「ウー」と言って牙をむく。

 しかし落ち着きのない犬だ。ジッとしていればいいものを、いつもウロウロして何かをクンクン嗅いでいるし、入ってきたお客に対してはいちいち敵意を見せるし、店主の姿が見えなくなるとヒンヒンヒンヒン寂しがるし、店主が姿を見せると大げさに尻尾を振って喜ぶし。

 ぼくが犬を好きになれないのは、おそらくはその落ち着きのなさにあるのかもしれない。猫も落ち着きのない動物だが、人慣れしている飼い猫であれば、人を見ても知らん顔しているし、飼い主がいてもいなくても表向きは喜んだり寂しがったりしない。

 とはいえ犬が嫌いなわけではない。好きになれないだけなのだ。親戚の犬は適度にかわいがっていたし、近所の犬にも友好的に接してきた。ただ、幼い頃犬に追われたことがあって、それが軽いトラウマになっているらしく、どうしてもマイナスの感情で捉えてしまうのだ。逆に猫に対しては、そういった嫌な経験を持ってないので、プラスの感情で捉えられるのだと思う。

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