吹く風

人生万事大丈夫

2018年12月

六十代で人生を諦めている友がいる。
もう終活でもやっているのだろうか、
世の中とは真逆の方向を歩いている。
世俗のことは他人任せになっていて、
何かに取り組む姿勢が見えてこない。
否生きる姿勢が見えてこないのです。

常に下を向き薄笑み浮べトボトボと
歩いている彼を見ていると既に魂が
この世にないように思えてならない。
否この世にないのは魂だけではない。
彼はいったいどこを歩いているのか、
時にその存在すらもなくなるのです。

勘違いしてはならない
我々生物は神の体内に
寄生するミクロの菌だ
故に神は意識しないし
愛を向けることもない
時に神が無慈悲な目を
我々生物に向けるのも
意識の外にあるからだ
勘違いしてはならない

ぼくとあの人はある時期
相思相愛だったんだけど
おたがいに意識しすぎて
構えすぎて、考えすぎて
縁のない人になりました

ぼくとあの人はある時期
相思相愛だったんだけど
それを知らずにきたので
片想いという認識を基に
今の人生は作られました

ぼくとあの人はある時期
相思相愛だったんだけど
一体そういう人のことを
何と呼べばいいのだろう
元恋人だとは呼べないし

かつて『象が踏んでも壊れない』という筆入れがあった。
テレビのコマーシャルでは、実際に象が踏んでいる映像が使われていた。
しかしそれは象が踏んでいるというよりも、足を乗せているだけにしか見えなかった。

高校一年の時だった。
CMから数年経っていたが、『やはりあれはおかしい』ということで、ぼくはそれを教室で実験してみた。

まず片足で体重をかけてその上に乗ってみた。壊れない。
軽く力を入れて踏みつけてみた。壊れない。
力まかせに踏みつけてみた。やはり壊れない。
それを何度繰返しても壊れない。
そこで机の上から、筆入れめがけて飛び降りてみることにした。筆入れの中心にうまく踵が当って、見事にクニャッとなり壊れた。

ということで、『象が踏んでも壊れない筆入れ』は、象が踏んでも壊れないが、人が机の上から筆入れめがけて踵落とししたら壊れることがわかった。

ある山の頂に布団を敷いて
ぼくらは睡眠をとっていた
粉雪が降り続いてはいるが
薄日が射してなぜか暖かい
ふと布団の外を見てみると
その一面を花が覆っている
冬のある日そんな夢を見た

床屋に行くと、いつもラジオがかかっている。
普段はパーソナリティのトーク番組をやっているのだが、今日は少し遅い時間に行ったためすでにトーク番組は終わりかけていて、ぼくが髪を切り始めてから間もなくして、次の人生相談が始まった。
ぼくはこの手の番組が苦手なので、聴かず眠ることにした。

ところが理容師は、この手の番組が大好きなようで、いちいち「それは違う」などと言って反応している。
そしてぼくが眠りに陥りそうになった時だった。「この人絶対におかしいよね」と、彼女はぼくに意見を求めてきたのだ。
黙っていてもよかったのだが、つい目を開いたために、聴いてもない人生相談について意見を述べなくてはならなくなった。

「そうですね。おかしいですよね」と、ぼくは適当に答えたのだが、その答を待っていたのか、彼女は勝ち誇ったように「ほーら、みんなそう思うやろ。やっぱりこの人おかしいんよ」と言った。

ぼくは再び眠りに戻ったのだが、心の奥底から『こんな下らん相談に反応する、彼女の方がおかしい』という無意識の声が聞こえてきた。

昨日の朝、職場に行くと「XXさんから電話が入ってました。折り返しお願いします」というメモが貼ってあった。
そこでさっそく電話をかけようとしたのだが、部署に一台しかない電話は、隣の部署のY子ちゃんが使っていた。
仕方なく電話は後回しにして、他の仕事をすることにした。

10分ほど経っただろうか、電話の方に目をやると、Y子ちゃんはまだ電話をかけている。
更に5分後、まだかけている。
『中々終りそうにないな。他の部署の電話を借りるか』と思って、そこに行こうとしたところ、ようやく彼女は受話器を置いた。

Y子ちゃんは、ぼくの所に来て「長々とすいません。電話終りましたので、どうぞ」と言った。
その途端、彼女はゴホゴホと咳込み出した。そして鼻をジュルジュル言わせた。そういえば顔色も悪い。
『えっ、あの電話使えんやん』
ぼくは彼女に「ありがとう」と言いながら、他の部署に行ったのだった。

角質化した肌がポロポロと
剥がれて落ちていくように
この人生も知らないうちに
剥がれ落ちているのだろう。
例えば体力がなくなったり
物忘れがひどくなったりだ。
人はそれを老化で片付ける。

だけど剥がれた肌の跡には
瑞々しい肌が生まれてくる。
決して老化ではないんだよ。
これはきっと進化なんだよ。
だから体力がおとろえても
物忘れがはげしくなっても
気にしないでもいいんだよ。
それは進化であるんだから。

腹から声を出しましょう
腹から歌を生みましょう
歌とは従来そんなもので
口先だけで唄ってみても
伝わらないものなのです
もしも歌だけであの人を
振り向かせてみたいなら
腹から声を出しましょう
腹から歌を生みましょう

神の前で宗教を必要とする
ヒトが体を曲げ祈っている。
その横で宗教を不要とする
ネコが体を曲げ毛繕いする。
おたがい懸命に生きている。

ヒトは安らぎを得るために
必死に神や仏を求めている。
ネコは安らぎを得るために
必死に肉や魚を求めている。
おたがい懸命に生きている。

朝に不安を感じた時には
不安の素をひとつひとつ
心の熱で溶かしていって
一滴残らず飲み込んだら
残尿感が残らないように
お手洗いで流しましょう
力いっぱい流しましょう
流して終了させましょう

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