吹く風

人生万事大丈夫

2012年08月

夏休みといえばいつも野球だった。
近所に住むガキどもが集まって
敵味方に分かれては飽きもせず
毎日何度も試合をやっていた。
おかげで日焼けして真っ黒だったが
熱中症いや日射病にかかる奴なんて
一人もいなかったな。
それもそのはず広場の脇には
日陰を作る樹木が植わっていたので
守備の回が終わると皆その下に集い
自分の打席が来るまで涼んでいたんだ。
ただ待っていてもしかたないので
そこにいる昆虫を捕まえてみたり、
大きなアリと小さなアリを闘わせたり、
メンコの裏の数字でおいちょかぶやったり、
ちょっとした時間も充分に楽しんでいたな。

昔好きだった人の夢を見ることがある。
以前は遠くから眺めている夢が多かった。
ところが最近はえらく近くにいる夢が多い。
ごく最近に見た夢などは
手が触れるような感触さえあった。

当然そこでの会話があるわけだが
ずっと好きだったんだなどといった
中高生的なお話などではなくて、
ちょっとした世間話や生活の話や
わりと現実に即したものが多くなっている。

もしかしてあの人も同じ夢を見ているのかな
なんて思うこともしばしばある。
まあ、相手にそんなことを
聞くわけもいかないから
そのへんは定かではないのだが。

とにかくけじめをつけないままに
終わった恋だったから
今もまだ心のどこかに
「好き」というのが
くすぶっているんだろうな。

妨げる波がなかったから
ぼくらは自由に泳げたんだ。
絡みつく藻がなかったから
ぼくらはどこにでも行けたんだ。
波を感じるようになったのは
いったいいつからだろう。
藻が登場するようになったのは
いったいどの場面からだろう。
その時その場面からぼくらは
生きるために臆病になったんだ。
その時その場面からぼくらは
わざと前を見なくなったんだ。

風が吹いてきて少しは
秋めいてきたのかな思ったら
台風の影響だったのか。
重苦しい雲が突如現れ
風は瞬時に強風に変わった。
おかげで車が激しく揺れている。
延々力尽くの雨が降ったり
脳が焼けるように暑かったり
スチーム状態の夜が続いたり
今年の夏は完全に狂っている。
それを考えるとさらに
この風が怖く感じる。

何でぼくは妥協するんだろうか。
これまでの人生でこんなことは
一度もなかったじゃないか。
ここは妥協する場面じゃなくて
突っぱねる場面だったじゃないか。
笑顔で受ける場面じゃなくて
真顔で受ける場面だったじゃないか。
円熟だって?老成だって?諦観だって?
そういうことからほど遠い世界で
ぼくは生きてきたじゃないか。
何でここで妥協するんだろうか。
何であいつに笑顔でいるんだろうか。
これからもずっとそうなんだろうか。

右を向けないこんな日には
左を向いて歩いて行こう
左を向けないそんな夜には
右を向いて寝ることにしよう

右も左も向けないこんな日には
真ん中を向いて歩いて行こう
右も左も向けないそんな夜には
真ん中を向いて寝ることにしよう

真ん中も向けないこんな日には
もう外に出るのをやめてしまおう
真ん中も向けないそんな夜には
もう寝ることをやめてしまおう

さりとてこんな日は滅多にないから
静かにじっとこんな日を楽しもう
さりとてそんな夜も滅多にないから
静かにじっとそんな夜を味わおう

夕方、ビアガーデンに
向かっている途中だった。
東の空にぼくは虹を見た。
ハッキリとはしてはいないが
しっかりと存在を示していた。
虹は北寄りの山のふもとと
ちょうど今向かっている
ビアガーデン辺りにかかっている。
虹の下には街があり港があり
海がありまた港があり街があり
そこに様々な歴史と生活がある。

さて虹を見るのは何年ぶりだろう。
前に見たのは無職時代だったから
もう五年が経っているな。
あの時も今日と同じように
東の空に浮かんでいたんだった。
そういえばあれを見てから
ぼくの人生は急激に変わったんだ。
ということは今の生活も
ほどなく変わるということか。
今回も前回と同じく、きっと
いい方向に変わっていくことだろう。
すでに危機は乗り越えているんだから。

家を出るとすぐにバス停がある
歩いて三分の位置にコンビニがある
歩いて五分の位置に24時間スーパーがある
歩いて十分の位置に本屋がある
歩いて十五分の位置に駅がある
車で五分の位置にショッピングモールがある
車で十分の位置にデパートがある
車で三十分の位置に新幹線の駅がある
車で四十分の位置に空港がある

たいして大きな街ではないが
大都会の情報に左右されなければ
かなり便利な街である

古い思考に頼っていても
今ある問題は片付かない
なぜなら今ある問題は
古い思考の積み重ね

今の思想に頼ってみても
今ある問題は片付かない
理想ばかりが先走っては
新たな問題を生んでいく

今ある問題に対処するには
そこから吹いてくる風を
焦らず騒がず期待して
待っているのが一番だ

元気に小便、風が吹く
元気に小便、夢がわく
今日も焦らずやっていこう
今日も楽しく待ってみよう

一昨日の午後五時から
左腕がプクリと腫れている。
患部は妙に硬くなっているし
押さえると痛がゆいし
どうやら蜂に刺されたものらしい。
そういえば一昨日の午後四時に
ぼくは車の窓を全開にして
駐車場で寝ていたんだった。
その前には何ともなかったし
腕の異変はその後に起きているし
きっと眠っている時に
蜂が腕に止まって刺したのだろう。

二日経っても治らないので
今日午後四時に病院に行ってきた。
診察は二分ほどで、
患部をちょっとさすって
「ああ、腫れてますねえ」
その一言で終わりだった。
血液検査もなく注射もせず
「お薬を出しておきますね」
で終わりだった。さてさて
今後患部はどういうふうに
展開していくのだろう。
それを考えると心配ではあるが、
ちょっと楽しみでもある。

それにしても刺されたのが腕で
よかった、よかった。と、
とにかく喜んでおこう。
ありがとうございますです。

(1)
盆の休みといったって
ただただ寝るだけの毎日だから
微妙に肉が付くんだな。
そして微妙な肉が積もり積もって
リバウンドってことになるんだな。
だけど何かをしなければなんて
盆の休みには思ったりしないんだな。
盆の休みというものは寝ころんで
ご先祖様と語らう毎日なんだから。
そのためにいろんなご先祖さまが
下りて来られるんだから。
決して無礼があってはならない。
ただただ寝るだけの毎日が
実は礼儀に適っているんだ。

(2)
ある占い師から
「これからの五年間はいいことはない」
と予言された五年間がつい先日終わった。
確かにこの五年間、何ひとつ
いいことはなかったのかもしれない。
だけど楽しい五年間だったと思う。
それにそれまでの集大成と捉えると
充分に充実していたとも思える。
だってお盆に休みが取れているんだから。
そのことに対して罪悪感がないんだから。
とにかくこれからはさらに楽しいだろう。

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